gaining through losing/平井堅

gaining through losing

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平井堅の過去のアルバムをいっこずつ聴いていく日々です。

自分のものの考え方のくせとか、アイドルを好きな気持ちとか、JPOPが彩っていたティーンエイジの時間の流れとか、あまちゃんを観てて薬師丸ひろ子のWの悲劇とか、ちょうどいまのタイミングで個人的な関心問題のすべてが平井堅という地点に集合したのです……。

「The Changing Same」(2000年)の次のアルバム、2001年の作品です。

2作のタイトルでは、変わりゆく中で変わらないものがあるとか、失う中で得るものがあるとか、そういう振れ幅に大切さを見出しているんですね、ラルクで言うと「ALONE EN LA VIDA」の世界観のような。

前作と比較すると、本格R&B路線を踏襲しつつ、背水の陣で全力入魂だった力みがとれてなめらかな声色になっていると思います。アコースティックな音色から、全体的に機械っぽい、コンピュータっぽいというの?打ち込みだったり、スクラッチ音がキュルキュル言ってたり、ベースがみょんみょん言っててシンバルがシャンシャン高音でドラムもドンって圧が高かったりするような、テンポ速めのダンスミュージックの方向へ舵を切っているんですね。

同時代的にはm-floの「come again」が同じ2001年で、JPOP的に踊り続けさせてねえDJっていうモードがすごくおしゃれだと受容された頃なのですね。平井堅の曲にもリミックスや女性コーラスでm-floが関わっていたり、平井堅は2001年に最初のリミックスアルバムを発売したりして、そういうシーンがあったのだなぁと今になってようやく思いました……。中学生だったからヒットの流れみたいなのはわかってなくて、平井堅は彫りが深くて歌がうまくておもしろい人だなーとしか思ってなかったから、他のアーティスト達もその頃どういう流れでみたいなこと考えてなかった……。

そういうダンスミュージックの流行みたいなものを意識したときに重低音の部分でDA PUMPのサウンドを連想して、ちょうどこの頃の「CORAZON」とか聴き返してみたらかっこいい音楽だなーと思いました。あんまりアーティストイメージが好きじゃなくて当時は曲がどうとか思ったことありませんでした(ただし、「if...」は女同士でカラオケで歌うと最高に盛り上がるのでずっと好きです。俺の行く末密かに暗示する人HONEY)。

本作は、大人のR&B/歌謡曲/JPOPっていう感じですごくかっこいいなと思って好きです!アダルトな雰囲気はあるんですけど、まだやばすぎる方向に振り切ってなくて笑、上品なので、怖いもの見たさなしにすんなり聴けます。

-01. She is!

胸の谷間見せて~、でアルバムが始まるのでなんかすごいなぁと面食らいます。ホーンセクションがゴージャス。

-02. KISS OF LIFE

当時はやりのツーステップ風味の曲なんだって。「come again」もそうだって。よくわからないけど、確かにアップテンポですごいチキチー言ってる。

シングルリリース当時は、MVが白っぽくて平井堅がテニスボールをスマッシュしてるのがおしゃれだなぁと思った記憶があります。わたしの中でトミフェブの「Bloomin'!」(2002)に並ぶテニスMV。

海野つなみ先生のまんがで得た知識ですが、KISS OF LIFEという言葉には人工呼吸とか起死回生策という意味もあるんですよね。

-03.  L'Amant

この曲はアレンジがドラマチックですごくかっこいい!

歌詞の内容は、喫茶店のような場所で本を読んでいる人妻のことをすごく好きになって、話しかけたこともないし名前も知らないけれど、それでもあなたを奪いたいっていう、まず実際にはねーよっていうシチュエーションなのも、身につまされることなく気楽に聴けていいですね……。

-04. Miracles

この曲もドラムのドコドン!ていうのがかっこいいし、大人っぽくてせつない上品なバラードでとっても好き。シングル初回盤には「Miraclesの香り」のアロマサンプルが封入されていたそうで、本当にすてきな香りが立ち上ってくるような曲、寝る前に香水をつけたくなるような曲だと思います。

-05. TUG OF WAR

間奏が少し「丸の内サディスティック」の鍵盤ハーモニカみたいでかっこいいです。

-06. メリー・ゴー・ラウンド・ハイウェイ

-07. TABOO

この曲も大人かっこいい!「きつく縛られるほど その鎖を解いてみたくなる」だって。

-08. Sweet Pillow

-09. LOVE OR LUST

この曲、わたしは平井堅の全部の曲の中ですごく上位に好きだと思う。

サビは「誰かを抱いていて/心は泣いていて」っていう響きの心地よい歌詞がルビーの指環みたいなキャッチーで渋いポップスのメロディに乗っていて、意味的にも「誰か」を抱いていてって何なんだろうその醒めた言い方は!?とかついつっこんじゃう感じですごい。

こんな大人の恋愛あるのかしらっていう歌謡曲の世界に、平井堅のせつない歌声がすごく噛み合わさってる会心作だと思います。

-10.  ワールズエンド

-11.  even if

-12.  Gaining Through Losing

壮大なゴスペル風バラードで、なんかアルバム全体とはちょっと毛色が違うんだけど、めちゃくちゃいい曲!!

本作の他の曲がベッドルームとかカフェとかバーとか車の中とか、こじんまりとした空間の中にしっとりプライベートな関係が息づいている曲なのに対して、この曲だけ人間のたくさんいる場所、広い空間、自然の風景を浮かべられると思います。

時代にぴたっとはまったヒット曲とはまた違った、普遍的な名曲だと思います。