Kの昇天/梶井基次郎

檸檬 (新潮文庫)に入っています、青空文庫でも読めます。*1
まず、先入観と違っていてとても面白いな、と思ったのは、健康な「私」が死や精神病に醒めたまなざしを向けるところです。なんか小説の主人公って死とかに憧れを抱いているのがお決まりだと思っていたから。絶望先生みたく。
「私」は療養地で出会ったK君が死んだという知らせを受け取る。精神を病んだK君は、月夜に浜辺で自分の影を見つめていると、ドッペルゲンガーが浮かんできて、見ている自分はすうっと月に昇っていくという「阿片のような」感覚にとりつかれていた。K君はそれに夢中になりすぎて影を追って溺死してしまったのだろう。とうとう月世界へ行ってしまったのだ、と「私」は考える。
この「私」の分析はつまり「"Kクン"は"不運(ハードラック)"と"踊(ダンス)"っちまったんだよ……」ということである。「"ピリオド"の向こうに"逝"っちまったヨ……!?(ビキビキ)」でもなんでもいいですけど。
K君と「私」は、ハイネの詩をもとにしたシューベルトの「ドッペルゲンゲル」の話題で意気投合するようなインテリの人たちなんだけど、死に近づく状況が暴走族とおんなじなのだった。

*1:http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/419_19702.html