「君たちはどう生きるか」を観ました

予備知識なしで観たので、その状態での感想を記録しておきたいと思います。

内容に触れます。


まず前半は、お屋敷がとんでもなく広くて、すごい裕福な人の話だと思った。襖絵みたいのがすごい。

髪を伸ばした転校生が車で学校に乗りつけてきたら、坊主頭で放課後に農作業を手伝っている同級生たちはおもしろくないだろうな。案の定喧嘩になっていたら、その後眞人さんが自分で怪我を負って同級生の仕業と思わせるよう仕向けたのですごく驚いた。

青鷺が執拗に眞人さんを塔に誘っていくのが、本を読みすぎて頭が変になってしまった大叔父という説明もあいまって、狂気への誘いという感じですごく不気味だった。かえるが全身を埋め尽くしていくところが病気の症状に思えておそろしかった。


下の世界に行くところは、たばこ好きなにくめないばあさんも一緒だったので、なんか心強かった。ばあやたちの一人は、〜ぞなと言っていて、坊っちゃんの清を連想した。

全体的にあまりよくわからないワールドに突入したのを、夢の中みたいだなーと思って話の流れのままに眺めていくのだけど、わらわらがでかい魚の内臓で滋養をためて空に飛び上がって、現世で人として生まれていくというのは、なんか理解できる気がした。肝油とか栄養あるから…子宮っていうか、生命が生まれる以前の世界なんだなと思った。


塔の中で大叔父に会い、眞人さんに跡を継がせたいと言って、白い積み木を託そうとするのだけど、眞人さんは元の世界に戻ると言い、悪意ある現世は争いが絶えず、じきに空襲で焼けてしまうのに…という話になる。塔の中は純粋な、形而上的な世界で、大叔父はそこで理想の実現に身を捧げてきたけど、眞人さんは、リアルの世界で、自分自身にも悪意があることに向き合いながら生きていく、ということなのだと思った。

ヒミとキリコは別のドアから現世に出て行こうとして、そしたらヒミは火事で死んでしまうと言われる。塔の中はやっぱり生まれる前の世界なんだなと感じ、父母未生以前という言葉を思い出した。


形而上的な観念的な世界よりも、リアルの世界を生きていく、という結論はすごく理解しやすい。一方、大叔父の血を引いている眞人さんが塔の主を継ぐことができるというのは、石とそういう契約になっているからという説明だけど、すごくエリートの世界の話だなと思った。わたしは大学で、高度経済成長期以降に教養の大衆化が進み、一部のエリートが物事を考えて世の中を作っていくのではなく、一人ひとりが自分の意見を持っていくことが大切である、ということについて勉強していた。それなので、宮崎駿監督はいまの世の中にエリートの若い世代に向けてこの作品を残そうと思ったのかどうか、そのへんの意図を知りたい。映画を観にくるたくさんのそのへんの人々(わたしみたいな、坊主頭の同級生たちのような)より、庵野秀明とか米津玄師とか、トップレベルの次世代への薫陶ということに念頭を置いているのだろうか。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』も、学生の頃読んですごいいい話だけどエリートとしてどう生きるかの本だったようにうっすら記憶していて、改めて読み直してみようかなと思う。

 

スタッフロールでは、お父さんがめちゃくちゃキムタクだ!!とずっと思いながら観てたけど、それ以外はわからなかったので、あいみょん滝沢カレンいたんだ!!とハッとした。