輝く日の宮/丸谷才一

輝く日の宮 (講談社文庫)

輝く日の宮 (講談社文庫)


女ざかり、樹影譚と2ヶ月にいっぺんのペースで丸谷才一の本を読んでいて、3冊目になった。これもすごく読みやすい文章だし、小説の中に論文や戯曲などの方法で書かれた章が混ざっているし、飽きるひまがなかった。源氏物語って興味持てなかったけど、大好きな人はもちろん、興味なかった人の関心もかきたてるように書いてある。
主人公の安佐子が論理よりも想像力だったり「そうにちがいない」「その方がぴったりくる」てフィーリングで主張を推し進めるところは好きじゃなかった。
源氏物語のスタイルがおとぎ話から始まって、人間の心情をリアルに描く近代小説、最後はオープン・エンディングのモダニズム小説で終わる、と本の中で言われていて、この本も、安佐子が15歳で書いた小説から始まって、最後は未来へ開けていく形で終わっている。こういうふうに、あるものとあるものが重なっている構図がたくさんしかけてあっておもしろい。再読するしてはじめて気づくのもたくさんありそう。
目黒の自然教育園での場面があって、わたしも大学のとき自然教育園に行って、観察して文章を書く課題があったのを思い出した(id:wafers:20081009)。正解として丸谷才一の描写を堪能してスッキリした。
年代記風の章では、1991年1月1日に東京23区すべての市内局番が4桁になった、という記述が出てきて、当時わたしは4歳、そういえばけっこうはっきり覚えていると思った。子供は電話番号が好き。そのころいたずらで110番して即逆探知されて戦慄したり、タウンページにも興味あったな。家電(いえでん)しかない時代の記憶がよみがえる読書体験だった。
次は清水義範の「猿蟹合戦とは何か」も読んでみようかな。